熱中症対策(前編)‐ きむ循環器内科医院 金 智隆先生

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>>きむ循環器内科医院 院長 金 智隆 先生のプロフィール

Q1.熱中症は最近よく耳にしますが、それと同時に熱射病、日射病も聞きます。それらの違いについて教えてください。

そもそも熱中症とは、旧分類では病態の度合いや治療の方法によって大きく4つに分類していました。その4つとは、(1)熱失神(ねつしっしん)、(2)熱痙攣(けいれん)、(3)熱疲労(ねつひろう)、そして(4)熱射病(ねっしゃびょう)です。これらをまとめて熱中症と呼びます。軽度の熱中症をI度と呼びますが、それが熱失神と熱痙攣です。そして次の段階のII度が熱疲労、そして重度のもの、III度と呼ばれるものが熱射病です。しかしはっきりとした定義はされておらず、医者の間でも様々な見解があります。 以上のことから、熱射病とは熱中症の中のひとつの段階の病名であると言えます。


Q2.それら4つの段階の、それぞれの症状を教えてください。

(1)熱失神(ねつしっしん)

人は汗をたくさんかくと、身体の水分が失われていきます。その水分とは、血管の中や細胞のまわりに循環しているものです。そういった、身体の水分が失われつつある中でちゃんと水分を補給すれば問題ありません。ですが、水分補給をせずに汗をかきつづけて水分が失われていくと、血管の中に循環している水分がなくなっていき、頻脈になり血圧が落ちます。そして立ちくらみのような状態になり失神が起こる。これが熱失神です。

(2)熱痙攣(ねつけいれん)

汗をかき水分が失われていく中で水を飲むとします。ですが、それだけでは十分な対処にはならないのです。というのも、汗は塩分も含んでいるので水だけを飲むと身体の塩分濃度が低くなります。そうなると身体のイオンのバランスが崩れ、筋肉が正常に働かなくなり痙攣します。これが熱痙攣です。

(3)熱疲労(ねつひろう)

I度(熱失神、熱痙攣)の症状が現れているにもかかわらず、水分、塩分の補給をしない、またはできずにいると、脱水症状になります。そうなっているのにまだ外部から熱が入ってくる環境下にい続けたると、身体の深部に熱が溜まっていきます。水分が体内から失われているので、体温調整のための機能である発汗ができなくなります。そうなれば体温は上昇し続け、身体がぐったりとして動けなくなります。これが熱疲労です。

(4)熱射病(ねっしゃびょう)

II度(熱疲労)の状態になっても、まだ水分補給などの対処ができずにいると、更に体温は上昇し続けます。そうなると皮膚は冷たくなり、直腸の温度が上がります。そして、脳の視床下部に温度中枢という体温の調整機能を司る部分があるのですが、そこが麻痺し体温調節機能が完全に失われ、場合によって身体に障害が残ることになります。具体的にどのようなことが起きるのかと言いますと、体温の上昇によって体内のたんぱく質が壊れます。これを失活(しっかつ)と呼びます。そして筋肉が崩壊し、腎臓に筋肉から分解したたんぱく質が流れ込んで、腎臓のフィルターがつまります。そして腎臓の機能が止まり腎不全になります。こういったことから、腎臓が最も障害の残りやすい場所です。これが熱射病です。


Q3.自分が熱中症とわかるための方法はありますか?

体温を測ることが、自分が熱中症であると自覚するために有効です。平常時の自分の体温より3、4度上がっていると危険です。深部体温が熱中症かを知るのに重要なので、わきよりも直腸、ベロの下の方が正確です。ですが普段からわきで測っていて、平常時のときのわきの体温を知っていれば問題ありません。

他には、身体の調子が悪くなり、暑い環境から涼しい環境に行っても状態が改善しない、外部環境を変えても症状が変わらない、ということは病態が悪化している証拠になります。

汗が出ているか、皮膚がカラカラしていないかというのも重要な指標です。暑いところにいるのに汗が出ていないと、体内の熱を放出していないことになりますから。


Q4.4つの段階のどの段階で医療機関へ行けばいいのですか?

意識が悪くなり始めたりひどい痙攣を起こすようであれば、すぐに救急車を呼んだり医療機関に行くべきです。意識がなければ待ったなしですね。自分自身で動けるようであればなるべく木陰やクーラーの効いた場所など涼しいところに行って身体を冷やし、水分補給をしてください。10分ぐらいしても改善傾向がなく症状が悪化するようであれば医療機関へ行き専門家に診てもらうようにしてください。

しかし、大事なのは治療よりも予防であることを忘れないでください。危ない病気であることを認識し、I度(熱失神、熱痙攣)にならないように、もしなったとしてもII度(熱疲労)、III度(熱射病)と症状を進行させないようにすることです。



お話を伺った先生:金 智隆先生(きむ循環器内科医院)


【略歴】

  • 平成5年 北海道大学医学部卒
  • 平成5年 大阪府立病院勤務(現:急性期医療センター)
  • 平成9年 大阪大学医学部医員
  • 平成13年 国立循環器病センター勤務
  • 平成20年 国立循環器病センター客員研究員(兼務)
  • 平成22年 きむ循環器内科医院 開院

【専門】

  • 循環器内科学
  • 医療情報学

【資格等】

  • 第11回日本心不全学会学術集会 YIA最優秀賞