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2007年 「パニック障害ってどんな病気?」 – 岡クリニック 医師 岡 達治 先生

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パニック障害について、岡クリニックの院長 岡 達治 先生にお話を伺います。

最近、テレビや雑誌等で、”パニック障害”という言葉をよく目にするのですが、どんな病気ですか?また、自覚症状のようなものはありますか?

前触れなく動悸、息切れ、冷や汗、脱力感、手足のしびれなどの自律神経症状や身体症状が起きて、強い不安感を体験する病気です。

「このまま死んでしまうのではないか」と感じるほどの強い不安です。

特別に危機的な状況にはないのですが、パニックに陥った時のような状態になることから、”パニック障害”と呼ばれます。

心疾患と似たような自覚症状があるのですが、心電図や心エコー検査をしても心臓には何の異常もありません。

昔は神経質のせいだということで心臓神経症と呼ばれていましたが、実験的に乳酸や二酸化炭素などで発作が誘発されたり、 抗うつ薬によって症状が抑制されることが分かってからは、生理的な要因、より詳しく言えば脳内神経伝達物質のアンバランスがパニック発作の原因であると考えられるようになりました。

パニック発作が一度起きると、また発作が起きるのではないかと不安になります。

これを予期不安と言います。困ったことに、予期不安が高まると実際に発作が起きやすくなるので、 パニック発作と予期不安の悪循環が引き起こされます。

そして電車や高速道路といった、助けを呼べない場所を避けたくなります。

これを広場恐怖と言います。乗り物恐怖や閉所恐怖がそれに含まれます。ひどい場合には家から出られなくなることもあります。

通常言う”パニック状態”も、動悸が激しくなったり、息苦しくなったりすると思いますが、”パニック障害”とどう違うのでしょうか?

状態としては同じだと思います。危機的状況に直面すれば誰でもいわゆる”パニック状態”になるはずです。

それは必要なことでもあります。人間が文明を持たない頃は、例えば虎に襲われそうになれば、”パニック状態”になって逃げ出さないと危険でしょう。

つまり人間には危機に対応するパニックの回路が備わっていると言えます。

しかし”パニック障害”では、このような現実の危険は見当たりません。

パニック発作が起きるのは日常のありきたりの場面です。ここが決定的に違います。

危険な場面を想像するから”パニック障害”が起きるという訳でもありません。

おそらく人間が誰しも持っているパニックの回路が急に誤作動してしまうのだと思います。

“パニック障害”は、多い病気なのですか?

臨床的実感としては非常に多いですね。

最初から”パニック障害”ではないかと思われてクリニックを受診される方も最近は多いのですが、身体の病気と区別がつかず内科や救急を受診され、 検査で何も異常がなく、精神的なものではないかと言われて、私のクリニックを受診されるというパターンが典型的です。

統計的にもパニック発作を一度以上経験する人は1~4%と言われています。

“パニック障害”を引き起こすきっかけや、原因のようなものはあるのでしょうか?また、予防方法のようなものはありますか?

先ほども言いましたように、人間にはもともとパニックを起こす回路が備わっていますが、普段は活性化されることはありません。

脳内神経伝達物質のアンバランスという生理的な要因がパニック発作の原因であり、葛藤があるからパニック発作が起きるという単純な図式は成り立ちませんが 、やはり発症が起きる前には、職場の異動、人間関係のストレス、家族の葛藤など心理的要因も背景に認められることが多いようです。

ですから葛藤を一人で抱え込まない、孤立してしまわないといった現実的なストレス対策は大変有効です。

それとパニック障害に対する正しい知識があれば、仮に発作が起きたとしても冷静に対処できると思います。

“パニック障害”は治りますか?

急性の発作はほとんどの場合治ります。

予期不安や広場恐怖はなくなるか、あるいはあったとしても漠然とした不安として少し残るかもしれません。

ですがごく軽い不安であれば、症状に振り回されるという感覚はありませんので、生活には全く影響がないと思います。

世の中で生きていると多少不安があるのが普通ですから、その程度には緩和されるということです。

いずれにしても、まずは専門家の診察を受けることが第一ですね。

先生ご自身は、パニック発作の経験はありますか?

私ですか?そうですね、一人で近くの山を歩いていて道に迷いパニック発作と同じ状態になりました。

仮に方角を失っても全く危険のないところだったのですが、必要以上に不安を感じて、動悸が高まりましたし、恐怖も感じました。

その時は歩いてきた跡をたどれば絶対大丈夫だと自分に言い聞かせました。

少し落ち着いて周りを見渡すと、木の枝に自分のタオルがぶら下がっていて、歩いてきた跡が見つかり不安が収まりました。

とにかく慌てないことだと思います。

“パニック障害かもしれない”という不安があっても、なかなか自分では判断しにくいと思うのですが、どういう状態であれば、受診したらよいでしょうか?

やはり、動悸、息切れ、冷や汗、脱力感、手足のしびれなどの自律神経症状や身体症状が続いたり、強い不安が続いたりするようであれば、専門医を受診されることだと思います。

それと自律神経症状は甲状腺機能亢進症などの症状である場合もありますから、血液検査や心電図検査なども受けられるべきだと思います。

――本日はどうもありがとうございました。(2007.8.10)


お話を伺った先生:岡 達治先生(岡クリニック・大阪府茨木市


  • 1989年大阪大学医学部卒業、同大学精神医学教室で研修を受け、1990年清風会茨木病院医師となり、同病院診療部長、大阪大学医学部精神医学教室臨床助教授(兼任)を経て、2006年-2007年奈良大学社会学部教授となる。2007年5月岡クリニックを開設し現在に至る。奈良大学大学院社会学研究科臨床心理コース 非常勤講師。

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