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2020年 「インフルエンザ&新型コロナ予防について」 八杉クリニック 医師 八杉 誠 先生

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インフルエンザと新型コロナ予防について、八杉クリニックの院長 八杉 誠 先生にお話を伺いました。

今年は、例年のインフルエンザに加え、新型コロナウイルスの感染についても予防対策が必要ですが、どのようにすれば良いでしょうか?

まず、皆さんも実行されているマスク、手洗いなどについては予防効果が100%であるとの誤解はされない方が良いと思います。
皆さんがお使いの不織布マスクは、フィルターの穴の大きさが5ミクロン(μm)程度です。新型コロナなど、ウイルスの大きさは0.1ミクロンくらいですから、空気中にウイルスが単体でいるときは、フィルターの穴を通り抜けてしまいます。我々医療者が、感染者の診療を行う場合は、さらに穴の小さいN95と言う規格のマスクを使いますが、それでも0.3ミクロン以上の微粒子しか排除できません。(N95:0.3ミクロンの物体を95%以上捕集する)もっとも、普通の会話などで吐き出されるときは水分(唾液)などに付着していますので、ウイルス単体より大きくなり効果はあります。人の密集する場所や、閉鎖スペースではマスクを付ける方が良いです。また、自分が感染してウイルスを持っているかどうか自覚できませんので、他人にうつさない気遣い、エチケットとしてマスクをしてください。

ところで、小さい子供さんなどは活発に動き回るので逆にマスクをしていると十分な呼吸が出来なかったり、体温調整が出来なくなったりしますので、3密の状況以外はマスクをしなくても良いと思います。
また、手洗いについてですが、テレビや動画で流れているような爪の先迄毎回几帳面に全てのコロナウイルスを洗い流すと良いのですが、なかなかそこまでできないかもしれません。少しでも自分に付着したコロナの数を減らすために、流水で洗い流したり、アルコール消毒などを小まめに行うことを習慣づけた方が取組みやすいと思います。

マスク、手洗いで完全な予防ができないとなるとどうすれば良いでしょうか?

どんな人でも体には自己免疫機能が備わっています。
マスクやうがい、手洗いなどはウイルスを入り口でシャットアウトする手段ですが、そういう関所をすり抜けて体に入ってきた病気のもととなる微生物(細菌、ウイルス)の侵入に備えて、この免疫機能が強力に働くように普段から鍛えておくことが必要だと思います。例えば、癌細胞は多くの人に発生していますが、ある程度の塊にならないと癌という病気になりません。
塊になる前に、免疫機能が働いて個々の癌細胞を破壊して発症をしないように体を守っているからです。ご存知のように、どんなに気を付けていても、様々な細菌やウイルスが体に入って来てしまいます。それら体に害を及ぼす敵をこの自己免疫機能により頻繁に破壊しています。
免疫を担うT細胞は癌細胞やウイルスを攻撃することはよく知られています。

子どもが人気のアンパンマン(T細胞)のように、バイキンマン(ウイルス、悪玉菌)をやっつけるように自己免疫力を強くするということですね。
では、その免疫力を強化するためにはどうすれば良いのでしょうか?

免疫力を高めるには4つのポイントがあります。

まず最初に十分な睡眠を取ることです。でれば8時間ぐらい取ると免疫機能も十分働くと思います。連続して睡眠時間を取れない場合は、昼寝や仕事の合間などバラバラでも構わないので通算時間でしっかり睡眠を取るようにしてください。

次に基礎疾患を持たないように、日ごろから規則正しい健康的な生活を心掛けることと併せて、定期健康診断を受けて自分の体のバランスが悪い部分を補強するよう医師のアドバイスを受けましょう。基礎疾患を持っていると何か別の病気にかかった時に重症化します。新型コロナだけに限りません。糖尿、動脈硬化、肥満、高脂血症、肝機能、腎機能など、健康診断など検査を受けると自分の健康面での弱点が解ります。普段からそれらに関心を持ち、医師のアドバイスを受けて強化しておくことが免疫力アップにつながります。

3つ目は、ストレスを溜めないようにすることです。メンタル面は、肉体面に大きな影響を与えます。ストレスが大きくなり、しかもそれらが長期に渡って蓄積、持続すると体の機能にも悪影響を及ぼします。

私も以前大病を患いましたが、その原因は大きなストレスによるものでした。普段からトレーニングなどで免疫力を高める努力をしていたのですが、通常ではかからないような嫌気性の菌が原因の病気にかかってしまいました。治ってから、家内に「あの時は、ストレスで人相が変っていたわよ」といわれるくらいの大きなストレスを抱えていました。確かにその時期は些細なことに対しても怒りを爆発させていました。
出来れば、皆さんも仕事や生活をニコニコしながらこなしていけるようにして貰うとストレスによる免疫力低下は防げます。

4つ目として、運動を習慣づけることです。何も運動せずダラダラ生活していると活動ホルモンが不活性化して行きます。これは、運動をすることにより自律神経が鍛えられ、自分にとって良好な状態へ回復させる機能が強くなるからです。運動をすると、体温や血圧が高くなります。その状態を適度な状態へ戻そうとするのが自律神経なのです。その自律神経を鍛えるのは運動が欠かせません。何もせず、ゴロゴロした生活を続けていると徐々に自律神経が弱ってきます。特に激しい運動をしていないのに脈拍が早くなったりするなど、正常な状態への回復機能が衰えてしまいます。
運動をして汗をかくと、ストレスを発散させる効果も大きいので、3番目のメンタル面にも相乗効果があります。

まとめますと

  1. 睡眠をしっかり取る
  2. 定期的な健康診断や医師のアドバイスを重視し、普段から自分の体の弱い部分をメンテナンスする
  3. ストレスを溜めない
  4. 運動を習慣づける

インフルエンザ、新型コロナなど感染症に対しては、マスク、手洗い、3密を避けるだけでなく、免疫力を強くして防御(予防)して欲しいと思います。

ところでいよいよ秋になり、季節性インフルエンザと新型コロナの両方について備える必要があるのですが、インフルエンザワクチンについてはどうでしょうか?

今年のインフルエンザ(2020年から2021年)の流行は、新型コロナのおかげ(?)でかなりマスクや手洗いが徹底して励行されているので、同じ感染症のインフルエンザにかかる人が少なくなるかもしれません。
しかし、インフルエンザと新型コロナの両方に感染する「混合感染」になると、治療自体が複雑になるので、やはりインフルエンザワクチンは打っておいた方が良いでしょう。
インフルエンザのワクチンの場合、抗体ができてから暫くすると抗体が減っていきます。流行期が長い年にはシーズン中に2回から3回打たないと効果が持続しません。但し、インフルエンザウイルスの場合は春から夏にかけて流行期は収束します。寒くて、湿度の低い秋冬にインフルエンザのウイルスは活発に活動するからです。

新型コロナの場合、いま出ている情報から推測すると一回接種すれば一生抗体が継続するようなワクチンは期待できません。そうなると、予防の為に年に何度も繰り返し接種する必要があり、インフルエンザワクチンより面倒かもしれません。
新型コロナについても、インフルエンザの治療薬タミフルのような特効薬が早く開発されることを期待しています。

ニュースなどでは、あまり聞かない自己免疫による対策のお話は、大変参参考になります。新型コロナ、インフルエンザ同じ感染症ですが、マスク、手洗い、人との距離だけでなく、自分の体を強くして、備えたいと思います。本日は、ありがとうございました。

お話を伺った先生:八杉 誠 先生(八杉クリニック・大阪市北区

【専門医・資格等】

  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定スポーツ医
  • 大阪府内科医会認定推薦医
  • 日本臨床内科医会認定医
  • 日本臨床内科医会専門医
  • 元大阪府保険医協会副理事長
  • 元大阪府保険医協会税務経営部部長

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